licoのわらえば

なんとなくな日常と気のむくままの創作雑記

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No Choice

 ちょっと待った、もう一回、と胸につけたデジタル時計の表示を5分前に戻す。友だちのNちゃんが、どこかの商業施設の螺旋階段を降りてくるところから。今度はもっと上手くコトを運ばなきゃ、と思う。そんなふうに、私は先ほどから何度か、時間を巻き戻しては気に入らないところを直していた、らしい。映画の撮影でもするみたいに。

 なのに急に、これで最後だよ、と言われてしまった。誰に言われたのはわからない。自分で悟ったのかも知れない。物事には限度があるのだと。そもそも、過ぎた時間の巻き戻しなんて、できないのが普通なのだから、際限なくやり直せると思う方がどうかしている。

 とにもかくにもこれが最後。そう思ったらいきなり緊張してきて、「アクション」の声もなくはじまったそのシーンに、さっそく出遅れてしまった。これは、さっきよりもマズいんじゃないか。動揺するそばからNちゃんとのタイミングがズレる。それに引きずられるようにして、細かなことがことごとく思うようにいかなくなった。

 違う。そうじゃない。もっと上手くできるはずなのに、と焦る。でも、時間はどんどん進んで、もう戻れない。そうして積みあげた場面の、そのどこかチグハグな感じが、推敲前の自分の文章のようで、直したいのに直せずに進んでゆく様が、1ページ飛ばしたまま、小説を読みすすめているような気分で気持ちが悪かった。

 気がつけば、気心知れた昔の仕事仲間と、空母かと思うようなばかでかい船の上にいて、強い風に吹かれながら飼い猫のバキャラを抱っこしていた。バキャラが重くて、腕が疲れてどうしようもなかった。一旦降ろそうと思うのだけれど、外で放してどこかに逃げてしまったら、もう二度と捕まえられないんじゃないかと、怖くて手を離せない。

 船には、多国籍な顔つきの軍人さんたちが大勢いた。軍人vs民間人、というよりは難民? どうやら、われわれこそが彼らの船に乗せてもらっている「お客さん」らしい。そうと知ったのは、国を追われている悲哀と焦燥と恐怖が、知らぬ間にこの胸の中に入りこんでいたからだ。ああ、私たちって、帰る場所がないんだなって。

 これからどこへ行くんだろうね、なんて話していると、軍人さんのひとりが、カタコトの英語で「エニバディ・スピーク・イングリッシュ?」と叫んだ。昔の同僚に、「licoちゃん英語わかるじゃん」と生贄のように前へ押しだされる。え、無理だって。英語なんて喋れないよ。もう何年も喋ってないもん。あたふたする。ただただ、みんなの前で恥をかきたくなくて、あの頃とは違うんだよ、と心の中で訴える。

 先手必勝。わからないことを訊ねられる前に、わかることを訊ねろ。それから、知りたいことを一方的に訊ねろ。会話の主導権を握れば、返ってくる答えは予想しやすいし、いきなり意味不明な話題を振られることもない。ああ、なんて姑息。私は訊ねる。「We cannot go home, can we?」「Where are we going?」「Do you think we'll be alright?」

 船はとある病院へ向かっていた。国を追われてきたはずなのに、あ、その病院なら知ってるよ、駅から遠いよね、と答えていた。「It's gonna be a long walk」とコメントすると、相手は「Yeah, that's too bad」と返し、「Can you make it?」と訊いてくる。そこで私は答える。「We have no choice」

 同僚たちの視線を感じる。licoちゃん英語喋ってるよ、すげえ、という顔だ。でも本当は、お互い中学生レベルの英語しか話していない。相手もネイティブ・スピーカーじゃないから、難しい単語は知らないみたいだった。それでも、なんとかカッコだけはつけられたみたいでほっとする。バカなプライドだと思いはしても、きっと私はそれを捨てられない。一生。

 船は進み、戦前だか戦時中だかに掘られて、今もそのままになっているという巨大なトンネルの中へと入ってゆく。真っ暗だ。何も見えない。目が見えなくなったようにも感じる。トンネルの壁に当たる波の音に耳を覆われ、そのほかの音は聞こえなくなる。海の上にいたはずなのに、どこやねん、ここは。

 と、思ったところで目が覚めた。え、夢落ち?(ちょっと違う)

 なんというか、見事に、というより、単純すぎるほどに、最近の私の暮らしぶりと心の在り方を映した夢でした。あまりにそのまんまで、暗示にも比喩にもなりゃしないなーと(苦笑)。自分で全部解説できちゃいそうだし、夢判断も不要かな。We have no choice=しょうがない、というあたりが、実に後ろ向き。

 そんなわけで(どんなわけだ)、ややキツい日々を送っています。例によって「生きてます」と生存報告をしようと思ったのだけれど、本当に生きてるのかなーなんて思ってしまった。だって、生きるって生活することじゃない? 最近は、なんだか生活できてない感じです。日々が猛烈な勢いで過ぎていって、本当はとっくに溺れて死んでいるのに、それに気づかずに「クソ忙しいな~」と嘆いているゾンビ気分。

 ああ、煙草が吸いたいな。禁煙223日目、4000本以上を我慢してきて、9万円近くを節約してもまだ思う、かつてないほどの恋心。

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